曇りの日
曇りの日が好きだ。
どのくらい好きかというと、空全体に薄く雲がかかっているような日、友人に「いい陽気だねぇ」と言ってしまい訝しがられるくらい好きだ。
もちろん空は晴れているほうが元気が出るし、陽光に当たれば気持ちがいい。洗濯物も乾く。(ここ数ヵ月はコインランドリーの乾燥機ばかり使っているけど)
でも曇りの日が好きだ。風がないとよりよい。
なんと言っても曇りの日は街が静かなのだ。といっても深夜のような、何の音もしない静かさではなくて、さらに言えば大きな音がすると「こんな時間になんだ、誰だ」と気が立つようなものでもなくて、街の音が聞きとりやすい静かさなのだ。
例えば車のタイヤがアスファルトを擦って進む音とか、季節外れの風鈴が鳴る音、鳥が群れて飛ぶ音とか、そういう音。
ぼくの住んでいる街だけかもしれないけれど、曇りの日はひとけがないような気がする。道を行く人もなんとなく元気がない。ような気がする。
そんな天気の日に窓を開けて、コーヒーを飲みながら、出先で買った本を読むと、ものすごく気分が良い。
ぼくはあまり溌剌なほうではなく、晴れの日でも部屋に閉じこもることが多い。そして、そんな自分のことがあまり好きではない。晴れの日は早く起きて、午前のうちに洗濯をしたり、溜め込んでいた家事を済ませたりして、優雅な午後を過ごすのが一番良いという考えだけはしっかり持っているからである。
だから、晴れの日を怠惰に過ごしてしまうと、「この怠け者が!」と心の中で自分を責めてしまう。そして元気がないまま次の日を迎える。良くない習慣である。
しかし!曇りの日はそういう気持ちにはならない。なぜなら普段街をゆく溌剌な人も、曇りの日は何となく元気がない(ような気がする)からである。自分も元気がなくったっていいじゃないか、と思えるのだ。本当は普段から元気はないのだけれど。
あれ、もしかしてぼくにとって、予定がない日の天気は、自分を体裁良く甘やかせるかどうかのバロメーターでしかないのか?
嫌な気づきを得た
折角の曇りの日なのに元気がなくなりそうなので、今回はここらでやめておくことにする。
皆様も、よき曇りの日をお過ごし下さい。